『ライ麦畑の反逆児』ネタバレなしのレビュー
作家サリンジャーの伝記映画『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』は、伝記に基づいた実際にあった話で構成。
小説『ライ麦畑でつかまえて』と作家サリンジャーのファンにとってはたまらない作品だと思う。
アメリカの作家J・D・サリンジャーは、二十世紀半ばに出版され、若者たちのあいだでカルト的な流行(ジョン・レノンの殺害犯が愛読していたことでも有名だ)となった『ライ麦畑でつかまえて』の他、数冊の本を残し、突然表舞台から姿を消し、以降一切作品の公表が行われなかった。
亡くなったのは二〇一〇年。謎に包まれたサリンジャーの晩年の生活も徐々に明らかになり、実は多数の作品を一人で黙々と書き続けていたことも分かっている。
この映画では、晩年の生活の様子ではなく、作家を目指していた学生時代から、戦争体験や『ライ麦畑でつかまえて』の執筆、そして隠遁生活に入るまでのサリンジャーの葛藤や苦悶が描かれている。
上映時間が一時間四十分ほどとそれほど一人の作家の人生を描くには短いので、テンポよく進み、多少駆け足に感じるかもしれないし、また『ライ麦畑でつかまえて』を読んでいないとピンと来ないシーンも多いので、一切サリンジャーに興味がないひとは(当然と言えば当然だけど)観ないでもいいと思う。
一方で、『ライ麦畑でつかまえて』は好きだったりサリンジャーに興味のあるひとには是非おすすめしたい映画だ。
また、「書く」ということ、「表現する」ということについてもサリンジャーの想いと葛藤と決断が響く映画なので、作家や画家志望だけでなく、芸人から舞台俳優まで様々な表現者を志す若者にとってもおすすめの作品だと思う。
この『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』を観る前に、まず小説の『ライ麦畑でつかまえて』を読み、映画を観たあとに、新訳を書いた村上春樹さんと翻訳家の柴田元幸さんの翻訳に関する対談『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』を読むといっそう理解が深まる。
作品情報
監督 | ダニー・ストロング |
脚本 | ダニー・ストロング |
メインキャスト | サリンジャー(ニコラス・ホルト)、ウーナ・オニール(ゾーイ・ドゥイッチ)、ウィット・バーネット(ケヴィン・スペイシー) |
公開 | 二〇一七年(アメリカ)、二〇一九年(日本) 上映時間 : 一時間四十六分 |
製作国 | アメリカ |
『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』予告編
>>サリンジャーの伝記映画『ライ麦畑の反逆児』の感想(ネタバレあり)
