カラスとクルミ割り
カラスが自分の餌であるクルミを道路に落として、走ってきた車に固い殻を割ってもらってから食べる、という話がある。
この「クルミ割りカラス」の話は、カラスの賢いエピソードとして有名で、僕も子供の頃に聞いたことがある。
子供の頃は割となんでも信じがちで、そういうこともあるんだろうな、と自然と吸収していたが、考えてみると、ちょっと不思議な話でもある。
カラスが、自然界にもともと存在する作用を使ってクルミを割る行為を覚えるならまだしも、車という近代的な人間の道具を使って割る、というのが、「だったら、昔のカラスはどうやってクルミを食べてきたんだ」と素朴に思う。
しかし、これも大人になって冷静に考えたら生じる疑問であって、子供の頃は素直に信じていたし、実際に、子供の頃に一度だけ、カラスがクルミを道路に落とす、という光景を見たこともある。
僕は車に乗っていたので最後まで結末を見ることはできなかったが、あるとき車の窓から外を眺めていたら、カラスが、道路の真ん中辺りにクルミのような木の実を落としていった。
もともとクルミ割りカラスの話も聞いていたので、あれはきっとクルミを落として車に轢かせる、という例のあれだな、と思った。
僕が、カラスのクルミを落とす様子を見たのは、後にも先にもその一回だけだった。
動画 : メチャお利口のカラス❕自動車にクルミを割らせて食う
ネットで調べたら、カラスがクルミのような木の実を道路に置いて割る様子を動画に残しているひともいた。
確かに、道路に起き、轢かれて割れるのを待ち、それから近づいて木の実を食べている。
動画 : Wild crows inhabiting the city use it to their advantage – David Attenborough – BBC wildlife
海外でも、カラスの木の実を割る映像は取り上げられている。
コメント欄を見たら、アメリカで、車のタイヤの前にカラスが栗の実を置き、木の上から様子を眺めていた、というひともいる。
また、種類も決まっているようで、クルミを車に割らせるカラスは、ハシボソガラスという種類との記述もある。
農村に多く、細めのクチバシをしたカラス類。オニグルミの硬い実を自動車に轢かせて割らせて食べるほか、海で採った貝類を岩やコンクリートの上に落とし、割って食べるなど、知性的な行動をする。
堅い貝やクルミを車に轢かせて割る、のである。ほとんどはハシボソガラスが行い、秋田や仙台などで観察されている。(『カラス狂騒曲』)
クルミ割りのカラスは、多くがハシボソカラスのようだ。
一方で、カラスはあえて車によって割っているのではなく、アスファルトに落として叩きつけることで割っている、という声もある。
最近、道路沿いでオニグルミの実を空から落とすハシボソカラスが見られます。カラスにはクルミの硬い殻を砕くだけのクチバシや爪はありません。
でも中身を食べたい。だから殻を割る方法を知恵を絞って考えたわけです。
空中高く飛んで、落とす。
── 殻が割れて中身を食べられたようです。
土の上に落としてもクルミは割れないので、アスファルトの舗装道路はクルミ割りの良い環境なのでしょう。
カラスの適応力と問題解決能力は大したものです。
この場合、車を利用しているのではなく、アスファルトの固さを利用している。
先ほどの動画を見ると、明らかに車に轢かせることで割っているように見えるので、カラスによって個体差があるのか、地域差なのか、木の実の固さによってなのか、割る方法も微妙に違うのかもしれない。
いずれにせよ、だったら車やアスファルトができる前は、木の実をどうやって食べていたんだろう、という疑問は残る。
ただ、カラスは賢い、ということだけは間違いなさそうだ。
