芸術

三島由紀夫のドキュメンタリー映画の感想

三島由紀夫のドキュメンタリー映画の感想

三島由紀夫の東大全共闘との対話の様子を記したドキュメンタリー『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』を観た。

もともとざっくりとした歴史の流れくらいで、三島由紀夫のことも、学生運動のこともよく知らないまま映画を観たものの、ドキュメンタリーだけあって、三島由紀夫と当時の学生たちの熱量や歴史資料としても十分面白かった。

『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』

東大全共闘の学生たちのなかで、赤ん坊を抱きながら煙草を吹かして三島と議論する、芥正彦氏。

赤ちゃんを抱っこし、煙草を吸いながら、壇上で三島由紀夫と対峙する、この映像だけでも、今ならあり得ないと大バッシングされそうだが、とても時代性が感じられる。

赤ん坊を抱っこする芥と、三島由紀夫

本筋とはずれるが、赤ん坊がとても大人しく、愛くるしい目をしている。赤ん坊の存在が、集まった学生たちの殺気立った空気を和ませる一因になっていたようだ。

芥正彦氏は、現在も存命で、俳優、劇作家などをしている。作品にも、現在の芥氏が取材に応えている映像が流れるが、他のメンバーと違って今でもギラギラしている様子が印象的だった。

芥氏は、「あれが媒体としての言葉に力があった最後の時代」と振り返っているが、まさに「言葉」で語り合う、という熱量が凄まじい空間だった。

話している内容は、(途中知識人たちの多少の解説も入るが)正直だいぶ難しかった。

ただ、人間としての三島由紀夫が垣間見える作品だと思う。

率直な感想としては、三島は「聞き上手」だと思った。学生たちに対する態度が優しい、ちゃんと聞く、向き合う。

学生たちへの敬意がある。東大教養学部900番教室という敵地(現在もある)で、三島由紀夫を敵視する多くの学生たちを前に、全く堂々とし、力むことなく、冗談めいたことも言う。

会場入り口には、三島由紀夫のことを「近代ゴリラ」と揶揄したポスターも貼ってある。

三島由紀夫は、この「近代ゴリラ」という揶揄に対し、「近代ゴリラとして立派なゴリラになりたい」とユーモアを混ぜる。

随所で、会場を笑いが包む。

三島由紀夫の余裕と、同時に、学生たちへの愛情や共感が見える。考え方が合わないとしても、その熱だけは、共有しているからこそなのだと思う。

最後の辺りで、三島は学生たちに、「私は諸君の熱情は信じます。これだけは信じます。ほかのものは​一切信じないとしても、これだけは信じるということはわかっていただきたい」と語りかける。

三島は、若者たちの熱情が、方向は違っても、嬉しかったんじゃないかなと思う。

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桜のきれいな町に住んでいるピエロです。