堀文子の名言
堀文子さんは、1918年に東京に生まれ、2019年に100歳で亡くなった日本画家で、長年、花鳥風月、生命の神秘を描いてきた。
画家として、数多くの作品を残し、「花の画家」とも称された他に、随筆などでも著作を発表している。
堀文子『ビップとちょうちょう』 1956年
以前読んだ堀文子さんの本には、彼女の生きてきた日々の長さから紡がれる強さや優しさが存分に詰まった名言も多く、心に寄り添い、励ましてくれる言葉に出会う。
高齢者の方々にとっても、より励みになる言葉も多いので、祖父母へのプレゼントとしてもおすすめじゃないかなと思う。
ここでは、堀文子さんの言葉を集めた『堀文子の言葉 ひとりで生きる(求龍堂)』から、命や自然にまつわる個人的に好きな名言を紹介したいと思う。
私はいま九十代のスタートなんです。
あと何年でお迎えがくるのか知りませんが、初めてのことなんです。「九十代」は初体験です。
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身体が衰えてきますと、誰でもが何もできない諦めの老人と思うでしょう。
けれども私は知らなかったことが日に日に増えてきます。いままで「知っている」と思っていたことが、本当は「知らなかった」と。それが、だんだんわかってくるのです。
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私は、生まれたときの、子どもの頃の、初めて知ったあの感動を取り戻したい。
これが目標なんです。この望みをかなえるまで、気を抜かず、わくわくしながら最後の旅を終えたいと思います。
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死は外から向かってきたのではなく私のなかにいた。一方、死に立ち向かう軍団も私のなかに存在していた。
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今は死が七割ぐらい体のなかにいます。もう遠いことではなくなった死に対して恐れを感じなくなり、死と共存していますからとても穏やかになりました。死は今では身内のようにいたわり合える間柄になりました。
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私たちは自然の生き物であることを忘れて人間がいちばん偉いと思っているからおかしくなるんです。
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息の絶えるまで感動していたい。
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その時その時をどう生きているか、その痕跡を絵に表すので、一貫した画風が私にはないのだ。結果として画風が様々に変わって見えても、それらはすべて私自身なのである。
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先を争って地に還っていく落葉の美しさはたとえようもない。傷一つない幸せだったもの。患ったもの。虫に食われ穴だらけのもの。神はどの葉にもへだてなく、その生きた姿を褒め称え美しい装いを与えて終焉を飾ってくださるのだ。
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王者の威厳をもつ、この老木の下で、今私は最後の絵を描いている。
出典 : 堀文子『堀文子 ひとりで生きる』
堀文子さんの言葉は、命や自然との向き合い方だけでなく、芸術家として、絵を描く詩人として、孤独に表現を続けることに関する名言に溢れている。
先行きの見えないこういう時代だからこそ、もう一度、地に足のついた原点について考えてみることが大事ではないかと思う。