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イチローと読書〜本を読まない三つの理由とは〜

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イチローと読書〜本を読まない三つの理由とは〜

元メジャーリーガーのイチローさんと言えば、世界的な打者ということはもちろんのこと、なんと言っても「言葉」が印象的なアスリートだ。

自分で思考し、自分の言葉を丁寧に紡いでいく姿勢に感動し、イチローさんのインタビューがまとまった本をよく読んだ。

特にイチローさんの言葉の魅力は、「間違えない」ということではないかと思う。

間違えない、というのは、誰が見ても絶対に正しいことを言う、といった善悪の話ではなく、言葉遣いの正否の問題でもなく、言葉にできないことは安易な表現で言葉にしないし、言葉にできることなら出来うる限り自分の感情や思考を精確にすくい取ろうとする、という言葉との向き合い方そのものを指している。

この「間違えない」ということが、イチローさんの言葉の深みに繋がっている。

これほど言葉を大切にしているのだから、子供の頃からさぞ読書家だったのだろう。おすすめの本や座右の書はなんだろう、と興味を持って調べてみると、意外にも、イチローさんは本を読まないと言う。

イチローさんが読書をしない理由として、「①めくるのが苦手」「②視力」「③答えが提示されるのが嫌」という三点を挙げている。

イチローが読書をしない三つの理由

  1. めくるのが苦手だから
  2. 目に悪いから
  3. 答えを提示されるのが嫌だから

以下、イチローさんが本を読まない理由について、一つずつ簡単に紹介したいと思う。

①めくるのが苦手

イチローさんが本を読まない理由の一つは、「めくるのが苦手だから」とのこと。

ちょっと意外な理由でもある。

めくるのが苦手、というのはどういうことなのか感覚的に想像しづらいが、指で本の端をつまんで細かく動かす動作が苦手ということなのかもしれない。

イチローさんは、子供の頃にお小遣いで野球漫画は買っていたものの、この頃からめくることが苦手で、漫画もさらっと読み飛ばす程度、まして活字の本は全然読まなかったそうだ。

②視力

また、「目に悪い=視力」というのも、イチローさんが本を読まない理由の一つだと言う。

確かに、野球にとって視力は大事な能力の一つでもある。

子供の頃からどっぷり野球に浸かっていたイチローさんなので、あえて野球にマイナスとなるかもしれないことはしない、というのも合理的な判断だと思う。

③答えが提示されるのが嫌

そして、なによりイチローさんが本を読まない理由として大きい要素は、読書によって「答えを提示されるのが嫌」ということにあると言う。

イチローさんは、ある対談のなかで、「本で人の生き方の話が出てきたとき、最後に答えが出てくるけど、あくまでその答えはその著者にとっての答えであって、それがまるで自分が導き出した答えであるように錯覚するのが嫌だ」と語っている。

実は一番苦手なのは、僕に問いかけるスタンスがあるんですけれど……見ている人に何か投げかけるスタンスがある。でも最後には、そこに答えが出てくるっていうのが苦手なんですよ僕。人の生き方の話とかあるじゃないですか、そういうものの中には必ず最後には答えが出てきてしまうことがあって、なんとなく頭で共感してしまうことがあると、なんとなく自分のものになった気がしてしまうんですよね。

その人が生きてきてその人が得たものなのに、なぜか自分も共感できるからそれを自分のものにしてしまう。でもそれは、僕が本当に自分の中から出てきているものではない、そこを錯覚してしまう事が嫌なんですよね。だから、何かを投げかけられる、それを自分なりに噛み砕く、で、こういうことなんじゃないかって事が僕は好きなんですけど、でも最終的にはそれが本の中に現れてくるので、ちょっと苦手なんですよね。

それよりも、自分が狭い世界ですけど、それなりに自分と向き合う、人と競争する中で色んな事があるわけじゃないですか。それをその中から何かを得たいんですよね、僕は。それってきっと、自分の言葉じゃないですか。そうすると人は、そんな事分かるから、きっと「この言葉ってこの人から本当に生まれたものなんだろうか」と感じる人ってたくさんいるじゃないですか。それがきっとそういうことだと思うんですよ。

出典 : イチロー選手×小西慶三氏 対談④

イチローさんが大切にしているのは、たとえ狭い世界であっても、自分の経験をしっかりと経験し、自ら噛み砕きながら言葉にしようとする、その「過程」なのだろう。

そして、そういう言葉は、「ああ、これはこのひと自身の言葉だな」と相手も気づく。

確かに、目に見える実績として凄いことをしたというだけでなく、たとえ世間一般から見れば狭い世界であったとしても、ちゃんと自分の経験として経験してきた人の言葉に惹かれる、ということもあるのではないだろうか。

もちろん、読書や知識の豊富さによって、他人を説得したり、分かりやすく伝えたり、あるいは論破されそうになった際に身を守ることもできる。

しかし、本当に「心を打つ言葉」というのは、自分自身や世界に対し、なるべくフィルターをかけることなく真っ直ぐ向き合ってきたことによって生み出されるものなのかもしれない。

ふと、詩人の長田弘さんの『世界は一冊の本』という詩の一節がよぎった。「世界というのは開かれた本で、その本は見えない言葉で書かれている」。

ただ、イチローさんが本を読まないからと言って、だから読書は必要ない、という話でもなく、僕自身、心が壊れそうだったときに、本の存在に救われたこともあるし、身体で学ぶ側面も大きい野球と違い、基礎知識の習得などに読書が必要になる場合もあるので、この辺りは、上手なバランスも必要なのだと思う。

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小さな町に住んでいるピエロです。