テレビ

あちこちオードリーのオンラインライブ【感想】

当サイトは、アフィリエイト広告を利用しています。

あちこちオードリーのオンラインライブ【感想】

心のお札はがし祭り 2021年

好きな番組の一つに、お笑い芸人のオードリーがゲストを迎えて深く本音を語り合う『あちこちオードリー』がある。

番組のコンセプトは「裸のトークバラエティ」。ラジオのような空気感と、オードリーの若林さんが心から興味を持っているんだろうなというのが伝わってくる質問や相槌に、ゲストもうっかり本音で語る。

もともとオードリーのラジオも好きなので、のんびりしながら嘘のない空気感の『あちこちオードリー』が絶妙に合っている。

数少ない、今純粋に面白いなと思える番組だ。

その『あちこちオードリー』が、二度目のオンラインライブを開催した。一度目が開かれたのは2020年の秋で、ゲストはパンサーの向井さん。テーマは、向井さんがつけているという「反省ノート」。

この反省ノートを、オードリーの二人もつけ、みんなで中身を語り合う、という内容で、生配信の視聴人数はなんと3万人だった。

一応、オンラインライブの最初に、具体的なネタバレ等は(炎上なども怖いので)禁止とのお願いがあり、視聴者だけの秘密となっている。

この第一回のオンラインライブが物凄く面白かったので、第二回のライブも是非観たいとチケットを購入した。

第二回オンラインライブのテーマは、『あちこちオードリー 真夏のオンラインライブ~心のお札はがし祭~』。心にお札を貼って封印していた感情や記憶、心の闇のようなものを、このライブのあいだだけ剥がそう、封印を解こう、というのが、この心のお札はがし祭りの主旨だ。

動画 : あちこちオードリー 真夏のオンラインライブ ~心のお札はがし祭~|予告編

ゲストはハライチの二人。以前、『あちこちオードリー』にハライチが出たとき、「ネタ受け取り師」というパワーワードも生まれるなどだいぶ神回で、そのときの手応えもあっての今度のハライチを招いたオンラインライブのようだ。

心のお札はがし祭では、ハライチとオードリーの四人が、それぞれ心にお札を貼って封印していたことを吐き出す。

ライブ前のインタビューで、オードリーの二人は次のように語っている。

若林 : 改めて、ハライチが来てくれた回を見返したんですよ。そうしたら、オレが岩井に憧れちゃっているなと。10年前とかにさかのぼって考えると、オレも岩井みたいに生きたかったんですよ。でもね、それは選ばれた人しかできなくて、オレにはできなかったことで。その岩井ちゃんが来てくれると、それこそ封印した部分、お札を貼った部分が開いちゃうんですよ。そう考えると、今回のオンラインライブが余計に怖くなってきましたね(笑)。岩井ちゃんがね、かっこいい開け方をするんですよ。いい風が吹くので、それに乗って、絶対盛り上がるライブになると思っています。

春日 : 私からすると、封印して、今スムーズに進めているので、なぜ今開けるんだと(笑)。すべてが終わる可能性もあるなという感じはありますね。その場がどうなるかですが、腰を落として待っていないといけないですね。

出典 : オードリー&佐久間宣行が語る『あちこちオードリー』 ハライチとのオンラインライブで“心のお札”はがす「いいもん、一緒に作りましょうや!」

今回の視聴人数は、前回よりさらに増え、6万人とのこと。

ライブの具体的な内容については書けないので、ざっくりした感想になるが、比喩的に言えば、辛口ラーメンや刺激的な珍味のような、病みつきになるタイプの面白さだった。

普段腐り芸人として色々吐き出しているからか、ハライチの岩井さんは意外とお札で封じていた感情は多くないように思えた。

抑え込んでいた感情が根深かったのは、澤部さんと若林さん。

この二人が、お札を剥がして語っているときの目つきや表情が、いつものバラエティの顔とは違い、積もり積もった闇が結構むき出しで、だいぶ刺激的なものを観ている印象だった。

しかも、具体名こそあまり出さないものの、あの人やあのことに対し、そんな風に思っていたのか、という本音も結構あり、信頼関係に基づいた約束とは言え、6万人がその秘密を他言せずに共有している、という妙な連帯感(具体的なことは言わなければハッシュタグ付きでツイートしていいので、オンラインライブ中、ツイッターでは色んな感想が、具体的な内容はなるべく避けながら飛び交っていた)も、不思議な感覚だった。

春日さんも、ライブ後、喋っているときは楽しかったものの、これはあとで「来る」かもしれないので、他の番組のスタッフも会ったときに「あちこちオードリーのライブ観たよ」といった話はしないでほしい、とお願いしていた。

たぶん、オンラインライブはDVD化もされないと思う。

見逃し配信としてアーカイブはしばらく残るが、その後はどこにも(少なくともそのままの形では)出ることがないんじゃないかなと思う。

そして、具体的なことはなるべく触れないように配慮されたライブ参加者の感想の断片だけが、ネット上にたくさん散らばっている、という謎の古代遺跡みたいな残り方をするのではないだろうか。

ちなみに、ライブ自体は面白く、2000円の価値は十分すぎるほどにあるが、ただ、あれほどお札を剥がして語っている様子を見ると、自分の心のお札も剥がれそうになるので、その辺りは注意が必要かもしれない。

僕もその夜、心のお札が剥がれたのか、本音で叫ぶ夢を見た。画面越しの彼らの表情や声から伝わってくる影響を、モロに受けたのだと思う。

絶望ワイドショー 2022年

さて、2021年の『あちこちオードリー』のオンラインライブは、心のお札はがしライブ。「心にお札を貼って封印していた感情や記憶、心の闇のようなものを、このライブのあいだだけ剥がそう、封印を解こう」という趣旨で、心のお札剥がしのゲストは、ハライチの二人だった。

そして、2022年夏のオンラインライブは、「夢と希望だけじゃ生きていけない 私の絶望ワイドショー(アーカイブ配信は8月22日まで)」というテーマで、ゲストはドランクドラゴンの塚地さん、銀シャリの橋本さん、クリーピーナッツのDJ松永さん。

ワイドショーの事件を伝えるようなテイスト(阿部祐二さんがリポート)で、絶望したことを、具体的なエピソードとともに語るという内容。値段は2200円だった。

このオンラインライブ恒例のルールとして、具体的な内容についてはぼかすこと(感想程度はよい)という決まりがあり、今回もあまり詳細なことは書けないが、この「絶望ワイドショー」も、前回同様(あるいはそれ以上に)病的な度合いが強く、具体名も飛び交い、白熱した面白い回だった。

塚地さんの細ロッカーに関する絶望も、橋本さんの相関図芸人の風潮に関する絶望も(ピン芸人の絶望29も)、DJ松永さんの過去のトラウマやファンに関する絶望も、人間模様が全開で、本音が吐露され、感動すら覚えた。

それから、若林さんの「逆ジョーカー」。「逆ジョーカー」の動きをしているときの若林さんの叫びや想いも胸を打つし、同時に笑えた。

春日さんの絶望だけが緩く、それはそれで番組の緩和剤になっているのがよかった。それくらい内容的にはみんな深く、重たいものでもあるのに、生放送でも番組としてはちゃんと笑いになっているのが、お笑い芸人さんの凄さだった。

橋本さんが、オンラインライブの最後に、これはバーチャルの世界だったかのように実感がない、といったようなことを言っていたが、それくらい弾けた内容だった。

それでも、終わってみるとみんな少しすっきりし、「絶望はみんなで焚べると楽になる(橋本)」「お焚き上げだね(若林)」という言葉が、本当にそうだなと思う。

抱え込んでいた絶望を思いっきり吐き出し、それをみんながだれも否定せずに、そうだね、つらいよね、と笑いも交えながら肯定し合う、これはちょっとセラピーというか、普通に治癒効果が高いんじゃないかな、とさえ思う。

ちなみに、翌日のラジオ『オードリーのオールナイトニッポン』でも、このライブについてちょっと触れられ、出演者も憑き物が取れたような表情だったようで、「祭り」は生き物として大事なんだな、という話をしていた。

4+
ABOUT ME
uta
小さな町に住んでいるピエロです。