サイレンで犬が遠吠えする理由
最近気付いた東京と地元の違いの一つに、犬の遠吠えがほとんど聞こえてこない、というのがある。
東京のような都会は、騒音などのご近所トラブルを避けるために、室内犬、小型犬が主流であり、外で犬を飼っている人は多くないのだと思う。少なくとも僕の住んできた都会の街では、遠吠え以前に、外から大きな犬の鳴き声がすること自体、ほとんどなかった。
地元では、実家で飼っていた犬にしても、他の家の犬にしても、一匹が遠吠えをすると、連鎖するように遠吠えをする。
特に思い出すのは、夕方のチャイムや町内アナウンス、パトカーや救急車のサイレンのときだ。チャイムやサイレンが鳴り、一匹が遠吠えを始めると、どこか遠くでも遠吠えが始まる。空に犬たちの遠吠えが響き渡る。
これは犬の遠吠えが連鎖しているのか、それとも同時発生的に犬たちがアナウンスやサイレンに反応しているのか、その辺りはよく分からない。
犬がサイレンで遠吠えをする、というのは、別に日本に限ったことではなく、海外でも一般的のようだ。
サイレンによって遠吠えをする理由としては、注意を促すためか、飼い主や仲間から引き離される不安感が背景にあると言う。
ご存じのようにイヌはサイレンなどの大きな警告音を聞くと遠吠えをする。米国動物愛護協会によれば、これは注意を促すためか、飼い主や仲間と引き離される不安感からだそうだ。
この「不安感」というのはしっくりくる。サイレン時の犬の遠吠えの声音は、聴いていても寂しさや不安感が伝わってくるような気がする。
一方、全国こども電話相談室でも、夕方に流れる音楽に合わせ、犬たちがいっせいに吠えるのはなぜか、という質問が届いている。
回答では、犬はもともと狼であり、狼は、「ここは俺たちの縄張りだ」「お嫁さんがほしいよ」といった意味で、遠吠えをしていた。サイレンなど音の波長が、ちょうど犬にとって合う高さだと、本能的に遠吠えをし、他の犬たちも、「自分はここにいるぞ」と縄張り意識のようなものから吠え出し、犬同士でメッセージ交換をしている、と解説されている。
オオカミっていうのは群れで暮らしててね、ときどき仲間同士の合図で「ここは俺たちのナワバリだぞー!」とか「お嫁さんが欲しいよ~」っていう意味で、遠吠えをするんです。それが「ワオーン」なの。
で、たとえば、消防車が「ウ~」ってサイレンを鳴らしてくると、方々の犬たちが一緒になって遠吠えを始めたりするんだけどね。
ちょうど、音楽やサイレンの波長の中に、犬が遠吠えを吹きたくなるようなものと同じ高さの音があるんだね、きっと。だから音楽によってだと思うんですけど、けっこう高い音に反応するんだよね。そうすると遠くの方で「こっちは俺たちだぞー!」って「ワオーン」って吠えるの。
山や森での習慣が犬の中にもまだ残ってるんだよね。だから、サイレンだとか高い音の音楽だとか、ちょうど自分たちの耳に合う音が出てくると、本能的に「ワオーン」って返事をしちゃうんだ。でね、一匹が吠えると、近くにいる犬も「僕はここにいるぞ!」「俺はここだぞ~!」ってみんな競争して鳴き出すの。「自分はここにいるぞ」っていうアピールなんだよね。
ところで、どんな種類の犬でも遠吠えをするのだろうか。
YouTubeで検索すると、ゴールデンレトリバーもトイプードルも柴犬もチワワも、ちゃんとサイレンで遠吠えをしていた。
動画 : 【トイプードル遠吠え】サイレンに反応するトイプードル犬!メス鳴き声
動画 : 救急車に応答する柴きいちろう ここにいるよ!
動画 : 遠吠えするチワワ
大型犬でも小型犬でも、みんなサイレンが聴こえると遠吠えをする、というのが面白い特徴だと思う。
誰に教えられたわけでもなく、野生からも遠ざかっているにもかかわらず、犬がサイレンで遠吠えをするということは、サイレンのような類の音に遠吠えをする、という習性自体、やはり本能的なものなのだろう。