パーカーとは〜和製英語、対象年齢や発祥は?〜
服の種類に「パーカー」がある。パーカーの最大の特徴は、頭にかぶるフードがついていることであり、冬服のアウターもあれば、春や秋に一枚で着れるスウェットパーカーもある。
男女問わず、子供から大人まで年齢的にも幅広く気軽に着れるファッションアイテムだ。
自分自身よくパーカーを着るが、ふと疑問に思ったのが、パーカーが似合う年齢のだいたいの上限である。おしゃれは自由というのは前提としても、しっくりくる大まかな年齢というのはあると思う。
老人になってもパーカーを着て、果たして似合うものなのだろうか。冷静に考えてみると、パーカーを着ているおじいさんおばあさんを見たことがない気がする。
そもそも、パーカーは日本で一体いつから着られるようになったのだろうか。戦前の日本の写真でパーカーを着ている人々の光景も見たことがない。
こうした疑問から、パーカーの言葉の意味や由来、発祥などについて調べてみた。
まず、「パーカー」という言葉の語源は、英語ではなく、ロシア北部のネネツ人が話す言語であるネネツ語で「動物の皮」を意味する、Parkaに由来する。
発祥は、イヌイットの防寒具である。
そのため、英語圏では、Parkaと言うと、寒い場所で着るようなフード付きの防寒具を指し、所謂「パーカー」は、hooded sweatshirtや、hoodie、hoodyなどと言う。
日本でパーカーと呼ばれるものは、ほとんどhoodieであり、インスタなどで海外のコーデをタグ検索する際も、こちらの名称で探すと見つかる。
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フード付きのトップスの総称を「パーカー」と呼ぶことは日本だけで、言わば和製英語と言っていい。 そのため、parkaと、日本の感覚で幅広く捉えて英語圏など海外で伝えると、がっつりした防寒具を連想されるようだ(日本でなぜ広くパーカーと呼ばれるようになったかの経緯は定かではない)。
パーカーの歴史は、先ほども触れたように、アラスカのイヌイットが着ていた防寒着Parkaに由来する。
素材には、アザラシやトナカイの毛皮が使われ、日常的に氷点下30℃になることもある極寒の地域なので、暖をとるためにフードを頭からすっぽり被る。
画像 : イヌイットの家族 (1917年の雑誌”National Geographic Magazine”より)
防寒具のParkaが、ファッションアイテムとして定着するのは、1970年代(1980年代という説もある)だと言われている。
登山やスキー、ヨットなど、アウトドア用の防寒具として使用され、イヌイットの防寒具との主な違いに素材や仕様などが挙げられる。
イヌイットのオリジナルとの違いは、毛皮ではなくナイロンなどの化繊素材で中綿入りの生地でつくられることや、前開き形式の場合にジッパーやボタンなどでフロントを固定する仕組みになったこと、ポケットなどの収納のほか防水(撥水)機能なども施されたことなどです。
現代的に改良が加えられた事で、機能的で活動しやすいアウターとして、運動着としてだけでなく作業着としても次第に利用されるようになりました。
それから間もなく、スウェット生地の普及とともに、ヒップホップやストリートファッションのあいだでフード付きのスウェットとしてのパーカーが流行し、カジュアルなおしゃれアイテムとして一般に浸透する。
また、パーカーが一気に広まったもう一つの要因として、1976年に公開された映画『ロッキー』で主人公がトレーニングウェアとして着ていたことも挙げられる。
映画『ロッキー』
それでは、日本では、パーカーはいつから着るようになったのだろうか。
日本でパーカーが流行するのは、1990年代、海外と同じようにヒップホップやスケーターのファッションとして流行り、一般に広がっていった。
そして、今では普通に誰でも着るカジュアルな普段着やファッションアイテムとして馴染んでいる。
*ただし、日本を含め、フード付きのアウターのミリタリーパーカーに関しては、1960年代、ビートルズブームのときにモッズファッションとして流行っているようだ(参考 : 英国のストリートが生んだ、モッズカルチャー。永遠のファッションアイコン、モッズパーカ)。
老人になってもパーカーが似合うかどうかがピンとこない理由としては、日本ではまだパーカー(スウェットパーカー)が浸透した世代が老人になっていない、というのも大きいのだろう。
ちなみに、子供用のパーカーに紐がないのは、フードによる事故の発生を受けて、2010年より、日本の子供服の業界団体「全日本婦人子供服工業組合連合会」が自主指針として取り決めた。