弱がりの意味
強がり、という言葉がある。
強がりとは、「弱みを見せまいとして、虚勢を張ること。また、その人」を意味する。
この言葉は、割と日常生活で使う言葉でもあり、「強がりを言うなよ」とか、「お前はほんとうに強がりなんだから」と言ったりする。
強がりは、動詞形で、強がる、という使い方もする。
ちなみに、Mr.Childrenの歌に『つよがり』という名曲もある。
凛と構えたその姿勢には 古傷が見え
重い荷物を持つ手にも つよがりを知るMr.Children『つよがり』
ところで、この「強がり」の対義語として、「弱がり」という言葉はあるのだろうか。
形容詞や名詞に「がり」をつける言葉としては、たとえば、「暑がり」「寒がり」「怖がり」、また「寂しがり屋」「目立ちたがり屋」といった言い回しもある。
しかし、どうやら「弱がり」という言葉は存在しないようだ。
強がりは、強いふりをして虚勢を張ること。
この際の「〜がる」の意味を調べると、「痛がる」や「得意がる」という言葉もあるように、そのように振る舞う、ふりをする、という意味になる。
一方、暑がり、寒がり、怖がり、というのは、ふりをする、という意味合いとは違う。
実際に暑かったり、寒かったり、怖かったりする。その感受性が高い、傾向がある、といったニュアンスになる。
ただ、この辺りが日本語の難しい点で、暑がる、寒がる、怖がる、と言うと、そのようなふりをしている、という意味合いにもなってくる。
それでは、もし仮に「弱がり」という言葉が存在するとしたら、一体どういう意味になるだろう、と想像してみたいと思う。
強がりが、「ほんとうは弱いのに強いふりをしている」という意味で、たとえばその対義語としての弱がりの意味を考えてみると、「ほんとうは強いのに、弱いふりをしている」となる。
ほんとうは強いひとが、弱いふりをする、という光景や心理状況が、正直ちょっとピンと来ない。
のび太が、自分の弱さを隠し、あるいは好きな人などに安心感を抱かせるために、虚勢を張って強がる、というのはわかる。
しかし、逆に、ジャイアンが、自分の強さを隠し、弱がる、というのが、どうも想像がつかない。
もし「弱がる」とすれば、せいぜい敵を油断させるために行うものだろうか。
ニュアンスとしては、「能ある鷹は爪を隠す」という言葉も少し連想させる(有能な鷹は獲物に知られないように、普段は鋭い爪を隠しておくことから。転じて、いざという時にだけその真価を発揮するということ)。
もう一つ、暑がりや寒がり、怖がり、という言葉に使われる「〜がり」をつけた「弱がり」のほうが、使うとすれば意味が合っている気がする。
感受性が高い、「(普通よりも)暑がり」「(他のひとよりも)怖がり」、というのと似たような意味で、「(普通よりも)弱がりなところがある」という風に使う。
のび太には弱がり(他のひとよりすぐ弱る)な面がある、というなら、さっきよりは違和感がない。
強がりの対義語としての弱がりではなく、暑がりや寒がりの類義語としての弱がりのほうが、まだ馴染むような気がする。