庵野秀明の「プロフェッショナルとは」の答え
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映画『エヴァンゲリオン』監督の庵野秀明さんが、NHKの『プロフェッショナル』で特集。
庵野監督の神経質で変わった天才ぶりが存分に描かれる放送だった(登場するスタッフ陣もみんなユニークで面白かった)。
特に印象深かったのは、庵野秀明監督の父親のこと。
庵野監督の父は、のこぎりで木を切る際の事故で左足を失ったという。そのため、幼い頃から家族で遠出した記憶もほとんどなかった。
この事故は、決して父親本人の責任ではなく、一緒に作業をしていたひとのミスだったこともあり、なぜ自分がこんな目に遭うんだと庵野監督の父親はずっと世の中を恨んでいた。
その恨みは、ときに息子である庵野監督にもぶつけられたという。
庵野少年は、「欠けているもの」を補うようにテレビの世界にのめり込んでいく。
夢中になったのは、『鉄人28号』だった。
また、観るだけでなく、描くようにもなった。庵野少年がロボットを描く際、必ず一つの特徴があった。
描かれるロボットには、手や足がなかった。
庵野監督は、「壊れて、取れているのが好きだった」と語る。『鉄人28号』もよく腕が取れるので、そういうのが好きだったんだな、と振り返る。
欠けているほうがいい、と思う感受性は、親の足がなかったことがもとにあり、また、「その親を肯定したいというのがあるのかもしれない」と庵野監督は語っている。
もう一つ、面白かったエピソードとして、妻で漫画家の安野モヨコさんが、夫の庵野秀明監督に、ズッキーニを食べさせようとしたときの話がある。
庵野監督は偏食がすごく、肉や魚を一切食べない。
言ってみればベジタリアンに近い食生活のようだ。
しかし、別に健康志向のベジタリアンというわけではなく、スナック菓子などもたくさん食べる(きのこ類は食べない)。
偏食の理由としては、喋る魚のアニメを見てから受け付けなくなった、という話もあるようだが、いずれにせよ、意思を持って実践しているのではなく、精神的に食べられないようだ。
あるとき、その偏食の庵野監督が、野菜のズッキーニを食べられなかったので、モヨコさんは、「これはキュウリとカボチャのあいだのような植物です」と丁寧に説明。
さらに、「あなたはキュウリは食べられる、カボチャも好きだよね、だから怖くないよ」と安心させていったと言う。
庵野監督がズッキーニを食べられなかった理由は、「知らないものに対する警戒心」だったそうだ。
そして、番組の最後。
恒例の「プロフェッショナルとは」という問いかけに、庵野監督は、「あまり関係ないんじゃないですか」と言い、にこやかな表情で、「そもそも番組にその言葉がついていることが嫌いなんです」と答えた。
考えたことがない。あまり関係ないんじゃないですか。プロフェッショナルって言葉は。
そもそもこの番組にその言葉がついていることが僕嫌いなんです。
だから他のタイトルにしてほしかったです。ありがとうございました。
出典 : NHK『プロフェッショナル(庵野秀明)』
庵野監督らしいひねくれた真正直な答えだった。
